想い綴り
「はいは~…って、なんだ高崎か」
「なっ、なんだってなによぉ!!」
学生アパートの一室。
“稲本”の表札がかかる部屋のドアをノックすると
のそのそと部屋で騒いでたメンバーの1人が顔をだす。
「お前、来るっていってからが遅いよな」
あたしの顔を見るなり、めんどくさそうに散乱した仲間たちの靴をよけて
あたしの手からビニール袋をかっさらった。
ぶっきらぼうな指先がかすかに触れて
ただそれだけで胸の鼓動が早くなる。
「…藤本が急過ぎんのよ。せめて朝にでも声かけてよね」
「あ~うるせー、もう誘ってやんね~」
ちょっと意地悪で、めんどくさがり。
ぶっきらぼうで、
普段からなに考えてるのかよくわかんないのは昔から。
でも…
「…嘘に決まってんじゃん。ほら、俺さみいから早く入れって」
ちょっと、しゅんとなるあたしを見て、
優しく目を細めるとこも
昔から、何も変わらない。
まだ
藤本があたしを“カンナ”って呼んで
あたしが藤本を“竜希”っていた
あの時から…