想い綴り
「…俺、転校する」
そんな言葉を聞かされたのは
竜希との毎日で
また巡ってきた高校3年生の夏のこと。
夏休みの計画で頭がいっぱいだったあたしには
簡単に受け入れられない言葉だった。
「…なんで…?どうして…」
「…俺…来年こっちの大学受ける。絶対戻ってくる。だから…それまで待っててくれないか?」
大学に入るまでの
離れ離れの半年間。
まだ、自力でどうにもできない子供なあたしには
会うことのできないその時間が、
まるで永遠みたいに遠くに感じた。
「…絶対……カンナのとこに戻るから…」
嘘のつかない竜希のまっすぐな瞳。
あたしの手を取る骨っぽい大きな手が震えてた。
…怖かった…
竜希のいない時間
想像さえも出来なかった。
でも…
誰よりも好きだったから
だから…
「…ずっと……ずっと待ってる…」
でも…
翌年の春…
竜希はあたしの前には現れなかった。