想い綴り
「しっかし、もうこの飲み会も定番だよな~」
「ってか、何で毎回俺の部屋なんだよ。いい加減、大家さんに怒られんだけど」
「稲本、あきらめろ。広い部屋借りたお前が悪い」
賑やかな笑い声
気の合う仲間たちの中で笑う楽しい時間。
当たり前のようにあたしの隣で笑う
藤本の笑顔…
こんな時間をまた
藤本と共有するなんて
あの頃のあたしには想像もできなかった
一年遅れで藤本が入学するまでの一年間…
竜希と…
…藤本と別れてから
誰とも付き合わなかったって言えば嘘になる。
でも、
誰と付き合っても…
「ほら、高崎、お前ウーロン茶だろ?」
「ん…ありがと」
「藤本~っ何、ちゃっかりアピールしてんだよ」
「はあ?そんなんじゃね~よ。こないだみたいに俺の前でリバースされちゃかなわんっ」
「は?ちょっ、それあたしじゃないわよっ」
「うるせー、黙ってウーロン飲んでろ」
…いつもこの笑顔が頭から離れなくて
結局続かなかった。
『カンナ…月に願い事するならなに願う?』
ずっと…
忘れられなかったあの日の言葉
まあるい月を見上げて思うのは今も
“もう一度…”
きっと叶わない
そんな願い…