想い綴り
「うわ~っ、やっぱり冷えるな~っ」
街灯の少ない通いなれた道。
さすがに深夜になると、道路を歩く人の姿さえも見当たらない。
車さえまばらなこの道、
淡く照らす月明かりが、並んで歩く2人の影を長く伸ばしてた。
「…買い出しって…まだ飲むの?」
チラッと見上げる横顔
あたしの方を見下ろして、ニヤッ笑ういたずらっ子みたいな笑顔。
頭に稲本くんのことがあるからかな。
なんだか妙に落ち着かない。
「…さっきなに話してた?」
自分の影を踏むように歩くあたしの上から聞こえる声。
一瞬ドキッとして
進む足がちょっとだけぎこちなくなる。
「…別に?何でもない」
「なんだよ、隠し事か?なんかやらし~」
「…藤本の顔の方がずっとやらしいってば」
なんだか気が付いてるみたいな言い回しに
ちょっとだけカチンとくる
やらしいのは、そっちでしょ?
何話してたか気が付いてるみたいなのに、
わざわざめったに出てこないベランダに顔出すなんて
それとも…
少しでも気になった…?
ゆっくりと顔をあげると
涼しげに月をみあげる横顔
「ねぇ?」
「あ?」
…お願い
たった一言…
たった一言でいい。
「…付き合ってって言われた…どうしたらいい…かな」
…引き止めて欲しかった