想い綴り






ほんの少し…

藤本の動揺する顔が見たかった。









あたしの言葉にぴたりと止まる足。


ゆっくりと振り返る藤本の心が読み取れない表情に


心臓が大きな音を立てた。











…お願い


“行くな”


そんな言葉じゃなくていい。




せめて
ほんの少しだけでも

やめとけって
引き留めてくれたら



そうしたら

まだ…あたしはこの気持ちを諦めずにすむから


だから…









だけど






「…良かったじゃん。アイツいいやつだし…いいんじゃね?」






藤本から返ってきたのは…

一番聞きたくなかった…


そんな言葉











「アイツって一途だしさ、彼女大事にするし…高崎にはもったいないくらいじゃね?」









ホント…

あたしって…
なんでいつもこうなんだろう。


自分で藤本を試すようなことしといて

言った後で後悔するなんて…











「…アイツなら幸せにしてくれる」







そんな…

ホッとした顔しないで


あの頃…

『カンナを幸せにするのは俺』



そう言ってくれた口で…

そんなこと言わないで…









もう…
ただ思うのもダメなのかな…









「…そ……っか…藤本も…応援してくれるんだ…」


「当たり前だろ?友達の幸せ妬むほど、ひがんだりしね~って」










『友達』









それはもう藤本を

思うことさえ出来ないくらい


きっと
そんな







遠い距離…




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