想い綴り
「…カンナ…俺に抱かれても、きっと藤本のこと忘れられないよ?」
静かに
まるで諭すかのようなその声に
心臓がドクンと大きく音をたてた。
「…な…稲本く…」
「カンナがずっと藤本を見てたのも知ってた。だけどすごく辛そうで…
俺がなんとかしてやりたかったけど、カンナをすくい上げるのは俺じゃない。
カンナ自身なんだよ」
まっすぐな稲本くんの言葉にただ見上げるしか出来ずにいるあたし
そんなあたしの頭をひと撫ですると
「…前に進むのは、自分だよ?ただ怖がって…足踏みしてたって、何も変わらない。
カンナはどうしたい?」
ベッドから引き起こして、優しい笑顔で笑ってくれた。
なんで…
なんで稲本君は
そんなに優しいんだろう。
好きだって言ってくれたのに
結局
こんな形で傷つけるあたし
ヒドい事してるのに…
なのに
「カンナ言って?
俺、カンナが笑ってる顔が好きだったから…
カンナはどうしたい?」
…そんなの
ずっと前から決まってる
どんなに離れても
忘れてしまおうとしても
消えることのなかった気持ち
でも…
「もう、自分に素直になっていいんだよ」
な?って
覗き込む瞳に溢れ出すのは大粒の涙と
「………っ……藤本のそばにいたい…っ」
もう
閉じ込められない胸の想い
それはずっと…
あの日からずっと
たった1人に
伝えたかった言葉…