想い綴り
『振られたら、今度こそ俺のにするから』
ちょっと切なげにそう笑う、優しい笑顔に背中を押されて
玄関を出た時には、すでに時計は8時を回ってた。
一刻も早く
藤本に会いたい
会って気持ちを伝えたい
…もう一度、
そばにいたい…
そう伝えたくて…
そう思って藤本のケータイを鳴らすけど
何度かけても繋がらなかった。
「…今ならちゃんと言える気がするのに…」
稲本君がくれた勇気
辛いはずなのに、
背中を押してくれたあの優しさをムダにしたくなかった。
ため息混じりに、ゆっくりと顔をあげた先には、
見守るように淡く光る丸い月。
やっぱり思い出すのは
『月に願い事するなら…なに願う…?』
そう笑ったあの笑顔。
もし…
今、願うなら…
「…会いたい…」
そう思った時だった。
♪~♪~♪
慌てて開いたケータイの着信
それは
『藤本 竜希』
愛しい人の文字だった。