想い綴り








“もう一度…”







抱き締められた腕の中で聞いたのは

切なげに届く竜希の声。




ゆっくりと顔をあげた先には、

照れ隠しの膨れ面が見えた。





でも

近くにいる間、そんな話したことない。


いつも、
そんなんじゃないって、はぐらかしてばかりだったのに…










「…一度もそんなコト言わなかった…」








胸に詰まる思いに涙くみながら見つめると、

ちょっとバツ悪そうに自分の胸にあたしの頭を押し付けて











「…俺、お前に一度、無理って振られてんだぞ?

それなのに…俺からやり直したいって簡単に言えるか?

お前はお前でフラフラしてるし…

俺だって好きで友達してたわけじゃねぇよ」











ため息混じりに呟いた。

静かに聞こえるのはドキンドキンと響く胸の音…

チラッと見上げると、こっち見んなってまたもとに戻される










「…稲本君と付き合うって言ったら、良かったって言ったくせに…」


「……そう言うしかねぇだろ…好かれてる自信なかったんだから」










竜希も…
ずっと怖かったのかな…


先の見えないこの気持ち…ずっと抱えていてくれたのかな














「………好き…」











竜希にだけ響くこの気持ち

膨らんでいく胸の熱さにこぼれた言葉…



まるですべてを包み込むように抱きしめると







「…もう、誰にもやらねぇよ…」








ちょっといじわるな顔で微笑んで

静かに深く…





キスをくれた。





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