想い綴り
はじめは…
正直、からかってんのかと思ってた。
俺の趣味を理解した振りして
他の女みたく、俺に取り入ろうとしてんのかって。
でも…
「…ほら」
「わあいっ♪」
昨日の夜中に作ったばかりの保存中の歌詞。
俺のケータイを奪い取ると、
途端にさっきまでの笑顔が真剣な表情に変わる。
液晶画面に視線を落として、
何度も何度も映る文字を反芻して。
細い指先でリズムを取り始める
ここで一緒に過ごすようになって最近、
気が付いたこと
こいつの目的は
他の女と違って『俺』にないってこと。
純粋に興味があるのは
俺が作る歌詞だけ。
今だって
自分の好みにぴったりあうと
ほらもう…
自分の世界に入り込んじまう。
「ん~♪~」
…こうなると、俺の言葉さえ届かなくなるんだよな。
ホント、変わってる。
…普通さ?
大の男がこんな…詩書くのにハマってるなんて。
引いたりすんじゃん。
なのにコイツは、
最初から、変な顔ひとつしないし。
それどころか、
めんどくさくなって、適当に作ったら、
「…これ、気持ち入ってない。あたし、そういうの分かるんだよね」
…なんて、ガッカリ顔であっさりスルー。
本当、変な奴。
でも、
「ねぇ、ここのフレーズ…あたし好きかも」
こんな…
芹沢との時間
…嫌じゃなかった。