想い綴り
「ん♪いい感じ~♪ねぇこれ、駅前で歌ってもいい?」
「…別にいいけど…」
「やったぁ」
半分呆れ顔の俺に見せるのは
すでにウズウズしてるご機嫌な笑顔。
…ホント、学校でのあの態度ってなんなんだか。
全くの別人じゃん
「…普段からそんな顔してりゃあいいじゃん。結構モテてんぞ、お前?」
8割方損してるじゃん、そう続ける俺を横目に、
「ん?興味ない」
あっさりと呟いて、歌詞に添えたフレーズを口ずさむ。
…いっつも、この話になるとスルーなんだよな。
「…お前、いじめられっ子?」
「は?なにそれ」
「いや、なんとなく…クラスでのお前がホントのお前に見えないし」
駅前で見た…
あの、気持ちよさそうに歌ってる姿の方…
あれがホントの芹沢な気がするんだよな
壁に寄りかかって、
黙って見下ろす俺に、目線をあわせると
フッとため息混じりに笑顔を見せた。
「あのさ、オペラ歌手の芹沢 透子って知ってる?」
は?なにいきなり…
芹沢が切り出した質問に首を傾げる俺。
「芹沢 透子って…あれだろ?なんだかって映画の主題歌歌ってるって…」
「うん、それ」
40過ぎてんのに声がキレイだとかで、
映画が話題になるたび、テレビによく出てる…あれだろ?
でも、それがなんだっつ~の?
「…あれ…、うちのお母さん」
「へ~?……
って、はあぁぁ!?」
芹沢って…、
はあぁぁ!?