想い綴り
いきなりのカミングアウトに、口を開けたまま硬直状態の俺。
そんな俺に吹き出しながらも、ほんの少し表情を曇らせた。
ゆっくり、真っ青な空へと視線をずらすと切なげに口を開いた。
「…あたしもね?小さい時から声楽やってたの。
歌うの大好きだし…
でも、あたしがいくら歌っても“芹沢 つぐみ”の歌じゃなくて…
“芹沢 透子の娘”の歌って…同級生とかも、そうとしか見てなかったし、コネ目当てな人も多かったから。
だから…上辺だけの付き合いに興味ない」
キッパリと
大事なもの以外いらないって言い切る芹沢…
正直…カッコイいと思った。
…俺は?
孤立すんのが嫌で
でも、目立つのも嫌で…
それってどうよって、いつも思うくせに、
適当に浮かないように周りに合わせて…
なんか…俺
だっせぇ…
嫌なら芹沢みたいに言い切ればいいのに…
ちょっと、へこみ気味な俺
そんな俺に気がつくと、
「あたし、倉田君の言葉好きよ?ありのままな言葉って音にキレイに溶けるの。
ねぇ?今度…恋の詩作って?」
なんだか照れくさそうにはにかんで
ね?って、上目遣いで手を合わせる。
…なんだろ
他の女が同じコトしたら嫌気さすのに…
なのに、相手がコイツだと…
嫌じゃ…ない…?
トクン…と
胸に落ちてくる何かを感じながら、ゆっくりと空を見上げた。
「…恋ねぇ~…したことねぇからわかんねぇよ」
「ありゃ、意外っ!!」
「茶化すな、バカ」
でも…
恋の詩……
コイツなら…
作ってもいいかもって…そう思った。
なんだ…これ
なんかやたらに…
芹沢の笑顔が眩しく見えた。