想い綴り
歌姫へのラブレター
芹沢との時間が増えるたびに
俺も少し…
ほんの少しだけ変わったのかもしれない。
「あれ?朔…」
「あ~、ごめん、用事あんだ」
「え~?朔…約束はぁ?由美ず~っと待ってるのにぃ」
断りきれずに参加する、つまんねぇ付き合いは相変わらずだったけど
でも
「…あのさそれ…、無かったことにしといて」
「え~っ!?なんでぇ!?」
「やっぱ、そういうの…彼氏とだけにしろよ」
前よりも
意思表示するようになった。
「…らしくな~い!!そんなこと言うなんて」
つるんでる連中には、
付き合い悪いって
ブーイングの嵐だったけど
でも
「俺も自分の女にそれやられたらやだし…悪ぃな」
前より…こんな自分を嫌だとは思わなくなってた。
まあ、それも…
「あれ?来てたの?」
「…来ちゃ悪いのかよ。ついでだっての」
「ついでだぁ~!?ムカつく。そんな事言うと、大好きの詩、歌うよ!?」
…みんな、芹沢の影響。
こうして
遊んだ帰りに立ち寄る駅前の片隅。
心のままに歌う姿を眺めるのも
すでに定番。
でも
「ねぇ、恋の詩…もう作らないの?あたしブログチェックしてるんだけど」
「…作っても載せねーし」
「え!?なんで~?ケチっ」
「ケチって…お前なぁ」
慣れてきたはずのこういうやり取りでさえ
「…楽しみにしてたのにぃ」
「…あんなラブレターみたいなもん、見せんのは1人で充分だし」
…ドキドキしてた
でも……
そんな俺をいいと思わない奴がいること
俺はまだ
気が付いてなかった。