想い綴り
「―…言葉を綴ろうキミへ贈ろう~
偽りじゃなく
心をこめて
世界にただ1人
大切なキミへ~…―」
途切れた歌声のあとに残る余韻…
不意に
俺を取り押さえていた腕が緩んだ瞬間
「あっ、おいっ倉田っ!!」
呼び止める声を背に
上履きも履き替えずに階段を駆け上がった。
目指す場所はもちろん…
俺とアイツだけの特等席。
切れる息を整えて、
ゆっくりと重たいドアを開く。
眩しい光の先に見えたのは…
ただ静かに校庭を見下ろす芹沢の姿。
目に映るその姿に
一瞬にして締め付けられる胸…
「…芹沢、俺っ」
「ねぇ、聞いていい?あの詩…誰を思い浮かべて書いたの?」
謝らなきゃ…そう思って口を開いた俺をせき止めたのは細く静かな声。
誰をって…
そんなの…
「…マジで聞いてんの?」
「いいから答えて」
強く言い切る口調に視線を合わせると
そこに見えたのは俺を見上げるまっすぐな瞳。
無表情に近い整ったキレイな顔に心臓が大きく跳ねた。
「…誰を思って書いたの?」
「……芹沢…つぐみ」
「なんで?」
「なんでって…それ聞くか?イジワルくね?」
「…聞かせて」
ゆっくりと落とされる言葉…
なんだか…
ギリギリのところにいるような、そんな感覚…
反らそうともしないまっすぐな視線に深く息を吐いた。
「…芹沢が好きだから…」
…なんだろ
口に出すまで…すんげぇ手こずるのに…
なのに…
すんなり胸に落ちてきた。
赤くなる顔を押さえながら見下ろすと
そこには
ずっと見たかった
嬉しそうに目を細める笑顔が見えた。