想い綴り
地下鉄駅から徒歩3分。
シグレの勤めるガソリンスタンドからは
ちょっと距離がある5階建てマンション
そこの5階の角の部屋。
キーケースに収まってる小さな合い鍵を回すと
玄関を開けた途端、大好きなシグレの香りがする。
しんと静まり返る部屋。
パチンと明かりをつけるといつもの通い慣れた光景。
飾るのが恥ずかしいっていうシグレを無視して壁に掛けた
2人の旅行の写真。
あたしのお気に入りのマグカップ
片隅に置かせてもらってる着替えの入った衣装ケース
見る限り、
この部屋にはなんの変化もない。
誰か他の人を…
それもなんだか違う…
じゃあ、なんで…
バレるような嘘ついてたんだろう…
「…もしかして…今までイブに一緒にいられなかったのも…関係ある?」
去年も
その前の年も…
よく考えれば、毎年同じ日にハプニングなんて
偶然にしちゃおかしな話…
しかもイブ。
一年で、約束しても会えないのは
たぶん、今までこの日しかない
「そんな日に会えないなんて…まるでサンタじゃあるまいし…」
そう思いながら、
ため息ついてソファーに転がった
その時だった。