呪われ暗殺ガール
そうして一人勝手に落ち込んでる内にも、美女は黙々と私の身体を拭いていく。
…当初、内々に処理したい割に世話係を付ける事を不思議に思っていたが、こういう事なら納得だ。
いくら好いた相手とは言え、流石に異性であるグレン様に拭いてもらうのは……。…。

「――顔が赤い様ですが、身体に何か異常でも?」
「えっ、いや!そんなきききききき気のせいです気のせい…!」
突然の指摘に全力で否定する私に毎度おなじみゴミ虫でも見る様な視線を向ける美女。
彼女は暫く此方を凝視した後、溜め息一つ落としながらいつもの問診を始めた。

「昼の問診以降、吐き気や目眩はありましたか?」
「ないです」
問診は毎回食事後に少し時間をおいてから行われる。
内容はこれまで変わらず同じものばかりだ。
「身体の痺れは?」
「今さっき食事してから全体的に少しだけ。初日に比べると大分軽いですが昼とは大差はない感じです」
「……」
こちらの回答は全て彼女の持つ帳面に記録されていく。
そのため回答はなるべく具体的するようにと初日に言われている。

「その他何か気になる症状は?」
これが最後の質問となる。
私は思い切って疑問に思っていた事を目の前の彼女に伝えた。
「何だか三日間寝たきりの割に筋力の衰えをあまり感じないのですが」
そう、二日目以降何となく身体に違和感を感じていたのだが、分かった理由がこれだった。
寝たきりにしては私は身体的、体力的な衰えをさほど感じないのだ。
「そこに関しては気にしなくていいです」
「!」
此方の質問に対して動揺も驚きも何もない表情の彼女。
――こうなる事も既に折り込み済みだったと言う事だろうか。
ダメ元でもう一押し出来ないかと質問してみる。
「あのお粥の効果ですか?」
「――まあ、そういう面もあるかもしれませんね」
「じゃあ――」
「では私はこれで失礼します」

バタンと。
強制的に終了した会話と共に美女は部屋から出て行った。
――たった一つ、僅かなヒントを私に残して。
「メシマズ責めには何か複数の目的がある…?」
彼女が何を思ってヒントをくれたのかは分からない。
けれどもこれは私にとって大きな一歩だった。
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