【短】迷子
「あの…」
不思議そうな顔をされ、我に返った俺は、ようやく元の体勢に戻ることができた。
一気に飲んでしまい空になったペットボトルのキャップを閉め、コンビニの袋に入れる。
「なにを書けばいいッスか、ね?」
背広の胸ポケットにさしてあるボールペンに手をかけた。
男は可愛い女に弱い。
それは仕方がないこと。
「えっ…?」
彼女が首をかしげると、黒く長い髪が太陽の光を浴びながらサラサラと揺れた。
「アンケート…ですよね?」
彼女が手にしている紙を指さす。
「えっ?あっ、違いますっ。これは…」
そう言って差し出されたB5サイズの用紙には、モノクロの犬の写真。
チワワ・オス・2才…
「3日前からいなくなってしまって…。探してるんです」
濃いグレーのスーツを着こなす彼女は、最近テレビで見かけるモデル出身の女優に似ていた。
困った顔も絵になる。