いつか見る青
プロローグ



その日は朝から、雨が降っていた。


お母ちゃんが、ひっそりと息を引き取った日。


女手一つで私を育てて、ずっとずっと、苦労づくめだったお母ちゃん。



お化粧もろくにしなくて、ブランド物の洋服も、靴も、ましてや宝石なんかも買えなくて。


女の人だったら、そんなの絶対悲しいはずなのに。


いつも楽しそうに笑ってた。



「あおいがいてくれれば、それで良いんだよ」って。


「あおいが私の宝物だから」って。



幸せそうに笑うんだ。


だからもっと笑ってくれるように、早く大人になろうと思った。


大人になって、立派になって、そして絶対親孝行するつもりだったのに。


たくさんたくさん、お母ちゃんの笑顔を見ようと思っていたのに。



私は間に合わなかった。


私の大人になった顔を知らないままに。



お母ちゃんはひっそりと逝ってしまった。
< 1 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop