いつか見る青
プロローグ
その日は朝から、雨が降っていた。
お母ちゃんが、ひっそりと息を引き取った日。
女手一つで私を育てて、ずっとずっと、苦労づくめだったお母ちゃん。
お化粧もろくにしなくて、ブランド物の洋服も、靴も、ましてや宝石なんかも買えなくて。
女の人だったら、そんなの絶対悲しいはずなのに。
いつも楽しそうに笑ってた。
「あおいがいてくれれば、それで良いんだよ」って。
「あおいが私の宝物だから」って。
幸せそうに笑うんだ。
だからもっと笑ってくれるように、早く大人になろうと思った。
大人になって、立派になって、そして絶対親孝行するつもりだったのに。
たくさんたくさん、お母ちゃんの笑顔を見ようと思っていたのに。
私は間に合わなかった。
私の大人になった顔を知らないままに。
お母ちゃんはひっそりと逝ってしまった。
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