いつか見る青
第一章
葵
「この度はご愁傷さまでございました」
仏壇代わりのテーブルに置いたお母ちゃんのお骨と写真にお線香をあげ、長い間手を合わせたあと、弁護士の神崎瞬さんは私に向き直り、丁寧に頭を下げた。
「あ、いえ。ごていねいに……」
すっごく滑舌が良い「ご愁傷さま」だったので、こんな場面だというのに心底感心してしまった。
とりあえず、大家さんに教えてもらった、こういう場面で言うべき言葉を返す。
「あ、良かったらお茶をどうぞ」
お湯を沸かして茶っ葉を出して……っていうのが何となくできない雰囲気だったので、ひとまず冷蔵庫に入ってた烏龍茶をコップに移し替えて持ってきた。
「いただきます」
神崎さんは微笑みを浮かべながらコップを手に取り口元まで運ぶと、中身を流し込み、コクリと飲み込んだ。
うわ~。
ホント、すごくカッコイイ人だな~。
近所のスーパーの特売の烏龍茶なのに、まるで高級ウィスキーのコマーシャルを見てるみたいな気分になる。
先ほど玄関先で見た感じだと、身長は、163センチの私より、少なくとも15センチ以上は高い。