いつか見る青
少し長めでサイドを軽く流している清潔そうな、サラサラの黒髪。


加えて、気持ち奥二重の切れ長の瞳と、通った鼻筋と艶の良い唇が黄金比率で配置された、純日本的な上品なマスク。


文句なく「イケメン」と呼ぶに相応しい男性だった。


弁護士じゃなくて、俳優にでもなれば良かったのに。


あ、でも、弁護士目指すくらいの人は、そういうのには興味ないか~。


不安定な世界だもんねぇ。



あ、もし、食いっぱぐれるのが心配だったら、二足のワラジとかでも良いんじゃない?


演技もこなせる弁護士さんなんて、洒落てるよね。



「残念です。もう少し早くたどり着いていれば、瑠璃さんにお会いできたのに」



「……え?」


私が脳内で神崎さんの芸能活動をマネジメントしている間に、話が進んでいた。


途中参加だったけど、たしかいま「瑠璃さん」て言ったよね?



「おか…母の名前、知ってるんですか?」


神崎さんはまたもや微笑んだ。



「もちろんです。だからこそ私は今、ここにいるんですよ」


……そっか。


このアパートを訪ねて来たんだもんね。
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