いつか見る青
あくまでも仕事に影響が出ない範囲内で付き合ってもらう約束だったのに。


「あ。いや、迷惑なんて、とんでもないですよ」


神崎さんは少し慌てながら答えた。


「昨日も申し上げました通り、私の仕事は顧問先の都合によって左右されますから。もちろん、先方とのお約束が無い場合は事務所内での業務に励みますが、今日の場合はそれも一段落していて、そして夕方にならないと着手できない仕事が控えているんです。その時間までダラダラと過ごしていては周りの方のやる気を削いでしまいますからね。なので、このタイミングで時間休を取る事にしました。じゃないと、次にいつ休めるか分かりませんし、体力的にも精神的にも持ちませんから」



私の顔を見つめながら、神崎さんは笑顔で続けた。


「だから葵さんは気にしないで下さい。むしろ、私のスケジュールに合わせて頂いている状況なんですから」


「いえ。そんな事は……」


そういえば神崎さん、いつの間にかまた敬語に戻っちゃったな……。


なんてどうでも良い事を考えている間に、この話はもう終わりと判断したのか、神崎さんは車をスタートさせた。
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