いつか見る青
「いえ。そんな事はないとは思いますが、初めての携帯選びは誰でも戸惑いますからね。少しでもお力になれたなら良かったです」


「でも、携帯電話って、ホント高いですよね」


私はふ~、とため息混じりに言葉を吐き出した。


「何かのお祝いでもないのに、こんな高価な物を頂いてしまって良いのかな~なんて…」


普段は切り詰めた生活だったけど、お母ちゃんは私の誕生日とクリスマス、それと進学の節目節目には奮発して色々なプレゼントをくれた。


と言ってもおもちゃじゃなくて、実用的な物で、その時に必要な物ばかりだったけど。


自転車とか鞄とか電子辞書とか腕時計とか。


でも、特別何も無い時に、こんなに高価で、しかも持っていなくても私にとってはさほど差し支えがないような物をポンと買ってもらえるなんて、ありがたい反面何だか申し訳ないようにも思う。


「お祝いじゃないですか」


前を向いたまま、神崎さんはやさしい口調で続けた。


「葵さんが美山家の一員となった、お祝いの品ですよ。そこは遠慮なさらなくてもよろしいのではないでしょうか?」
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