いつか見る青
今の状況を忘れて、思わず顔を上げてしまった。


「少なくとも、美山氏は……」


重力に負けて、雫がポトリとこぼれ落ちる。


「さぞかし心細かったでしょうね」



神崎さんはスーツのポケットから青いハンカチを取り出すと、私の頬をトントンと叩くようにして涙を拭いてくれた。


さらに涙を誘うような、とても柔らかくやさしいタッチで。



「先ほども言いましたが、あなたを探していたんですよ、あおいさん」


「え…」


「お父様のお父様、つまり、あなたにとって祖父にあたる美山一郎氏が、あなたと瑠璃さんの行方を、ずっと探していたのです」



『そふ…』


その言葉の意味は考えるまでもなく、すぐに理解することができた。


だって、私は小さい時からずっとずっと考えていたから。


お母ちゃんには言えなかったけど、一度で良いから、おじいちゃんやおばあちゃんに会ってみたいなって。


お父ちゃんの成長を小さい時からずっと見守ってきたその人達に、お父ちゃんの歴史を語ってもらえたら、きっと、すごく幸せだろうなって。



「私は美山氏の命を受け、孫であるあなたをお迎えに来たんです。あおいさん」
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