いつか見る青
民さんは人の心を裸にする天才かもしれない。


私はもう、声を押さえる努力も放棄して、子どもみたいに力一杯【えっえっ】と泣きじゃくった。


お母ちゃんも、天国から、私のこの姿を見ているだろうか。


『泣いてたって、何も解決しないよ』


ふいに、そう厳しく言い放った、遠い日のお母ちゃんの姿が脳裏に浮かぶ。


小さい時、自分の意見が通らなかったり言いたい事がうまく伝わらなかったりしてグズって泣いてしまった時があったけど、お母ちゃんは言い訳の涙には厳しい人で、それが免罪符になる事は決してなかった。


それどころか、さらに容赦なくお説教されたりして。


だけど。


……きっと今だけは、許してくれる筈。


とても温かくて心地良い手のひらで、辛抱強くいつまでも優しいリズムで背中をさすってくれる民さんに促されるように、私はそれから長い時間をかけて泣き続けた。


涙と共に、心の中で燻っていた何かが、綺麗に洗い流されて昇華して行くのを感じながら。
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