いつか見る青
「ああ、近所で飼ってる家が何軒かあるからな。そこら辺散歩でもしてんじゃないか?別に不思議な事じゃないだろ」


「そうですね」


肩をすくめつつそう言うと、未来は部屋の奥に移動し、テレビの前に座り込んで電源を入れた。


そしてテレビボードの戸を開けて、ゲーム機を取り出し、準備をする。


勝手知ったるなんとやらで、迷いのない自然な動きだった。


「で?どれからやりましょうか?」


「ああ、お前適当に遊んでて良いよ。俺、読んでおきたい本があるから」


「はぁ?」


「卒論の参考文献でさ。中学生のお前でも、その重要性は分かってるだろ?それをクリアしないと卒業できないんだからな。進められる時に進めておかないと」


「……さっき、『特別やる事はない』って言ってませんでしたっけ?」


「いや。さっきまではホントに遊ぶ気満々だったんだよ。でも、急にやる気が出て来ちまったからさ。この機会を逃したくないんだ」


未来はタオルで顔を覆いつつ「はー」とため息を漏らした。
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