いつか見る青
すると背後でガタガタと音がし、次いでテレビの音が消えた。


振り向くと、未来がゲーム機を片付け、立ち上がる所だった。


「どこ行くんだ?」


「本を読むんでしょ?俺はもうおいとましますよ」


「遊んで行かないのか?」


「嫌ですよ。落ち着かないですもん。リビングで、テレビでも見させてもらいます。じゃ、卒論の下調べ頑張って下さいね」


未来はそう言いながらとっとと戸口まで歩を進め、ドアを開ける。


そのまま出て行くのかと思いきや、ふいに振り返り、俺をじっと見つめて来た。


「……何だよ?」


「うまく、言えないんですけど」


「え?」


「俺は紫さんの事、すごく尊敬してますよ」


「はぁ!?」


いきなり何を言い出すんだコイツは?とポカンとしている間に、さらに未来は言葉を紡いだ。


「紫さんが暗い気持ちから抜け出せて、穏やかに、納得のいく人生を送る事ができるようになれば良いなって、心からそう思います」


中学生らしからぬその物言い、表情に、改めて度肝を抜かれている間に、未来は静かにドアを閉めた。
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