いつか見る青
そう言いながらお母さんは立ち上がると、入り口近くにある戸棚に近付いた。


その上に乗せてあった救急箱を背伸びして取り、ソファーまで戻って来ると、ふたを開けて「え~と、小児用の風邪薬は……」と呟きながら中を覗き込む。


「遊んでる時はあたたかかったもん。汗もかいたし」


「その汗をきちんと拭かなかったから体が冷えたのよ、きっと。どんなに気を付けていても病気になる時はなるけど、できる範囲で予防はしておかなくちゃ。また、あの時みたいに痛くて苦しい思いをするのは嫌でしょ?」


お母さんが何を言っているのかはすぐに分かった。


一年くらい前、ぼくはすごくひどい風邪をひいてしまって、熱が38度くらいにまで上がってしまった事があった。


痛いお注射はされるしすごく気持ち悪くて吐いちゃったりして、大変な目にあったんだ。


もう、あんな思いはこりごり。


だからぼくはお母さんの言う通り、大人しくお薬を飲むことにした。
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