いつか見る青
精一杯の笑顔でそう答えると、物事に動じなさそうな彼は何故か一瞬とても驚いたような表情になった。


だけどすぐに自分を取り戻したようで、笑顔を浮かべつつ私に接近し、数10センチ離れた位置で足を止める。


「朝から随分と元気ですね、葵さん」


「え?うん」


未来君の言葉に、笑顔を保ったまま続けた。


「せっかくの夏休みなんだし、楽しく過ごそうと思って」


「…そうですか」


そのまま成り行きで、肩を並べて未来君と共に階下へと降りていく。


食堂にたどり着くと、定位置に座るおじいちゃんに民さんがコーヒーを出している所だった。


「おはようございます」


未来君とユニゾンで、二人に向けて挨拶。


「ああ、おはよう」


「おはようございます。葵さん、未来さん」


おじいちゃんに次いで挨拶を返してくれた民さんとふいに視線がかち合った。


昨夜に比べたら大分すっきりとした表情になっている(であろう)私に安心したのか、優しく微笑んだ後、民さんは「ただいま朝食をお持ちしますね」と言いながら台所へと消えた。
< 192 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop