いつか見る青
壁掛け時計にチラリと視線を走らせてからおじいちゃんは宣言する。


「9時半頃、家を出る事にしようか。運転は私がする」

「あ、はい。お願いします」

「それで、せっかくの夏休みなのだから途中どこか寄り道でもしよう。と言っても、ここから病院までのルート上で考えるとデパートぐらいしか思い浮かばないが」

「え。良いんですか?」

「そんな、気を遣ってくれなくても大丈夫ですよ?おじさん」

「いやいや、気など遣っていない。私自身がたまにはゆっくりと買い物を楽しんでみたいんだ」


何気なく発せられた言葉だったけれど、それは超多忙でプライベートな時間などほぼ皆無なおじいちゃんが、常日頃から抱いていたささやかな願いなのであろう事は、ヒシヒシと伝わって来た。


「しかも、若者二人に付き添ってもらえる機会などそうそうない。どうか年寄りのわがままを聞いてはもらえないだろうか」


それに、大切な親友のお孫さんが遊びに来てるんだもんね。


そのチャンスがあるのならば、ぜひともおもてなししたいという気持ちもあるだろう。


だからおじいちゃんが提案してくれたプランに異論を挟むつもりはない。


「そして一通り店内を見ている間に昼時になるだろうから、中にあるレストランでついでに食事も済ませてしまおう」


そんな風に考えている間にもおじいちゃんは着々とスケジュールを組み立てそれを披露した。
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