いつか見る青
お腹を押さえて倒れたんだ。


夕飯の準備をしていた台所で。


眉間にしわを寄せて。


額に脂汗を浮かべて。


すごく苦しそうな表情で。


どんな時も笑顔を絶やさなかったお母ちゃんが。


そんな辛そうなお母ちゃん、見たことなかったから、私はすごく慌ててしまった。


慌てふためきながら、何とか救急車を呼んだ。


病院に向かう車の中、お母ちゃんは弱々しく微笑んだ。


「大丈夫だよ……。あおいがお医者さん連れてってくれるから、お母ちゃん助かるよ……」って言いながら。


こんな時まで笑わないでいいよ。


無理してしゃべらないで。


私は半分怒りながらお母ちゃんに訴えた。


だけどそう言う私こそが、お母ちゃんに無理をさせている張本人だった。


涙が、あとからあとから溢れて止まらなかったから。


私を安心させるために、お母ちゃんは気力を振り絞って微笑んだんだ。



きっとそれが



私への最後の笑顔になるって、お母ちゃんは分かってたから。
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