いつか見る青
紫
「そうか、夏休みに入ってからか」
「ええ。色々準備がありますからね」
階段を降りきったところで、親父と神崎さんの声が聞こえてきた。
あいつのことで話し合っているらしい。
胸クソ悪い感情を抱きつつ、俺は食堂に足を踏み入れた。
なるべく二人と距離を取れるように、無駄に広いテーブルの、一番下座の席に腰掛ける。
「紫君、こんばんは。お食事時にお邪魔して申し訳ない」
神崎さんが、にこやかに声をかけて来たので、俺も「どうも」と頭を下げた。
親父がチラリとこちらを見たのが視界の端に映る。
何だよ。
ちゃんと、挨拶しただろ。
まさか、俺にも会話に参加しろってんじゃないだろうな。
冗談じゃない。
夕飯だっていうから降りて来ただけだ。
その時、部屋の奥の扉が開き、家政婦の民さんがワゴンを押して食堂に入って来た。
そこに乗せられている料理を、それぞれの席の前に配りはじめる。
今日は肉じゃがか。
我が家のメニューはたいてい和食だった。
親父があまり洋食を好まない。