いつか見る青
とてもそうは見えないけど、この人も、もう70近いじいさんだからな。


神崎さんの「や~、美味しそうですね!いただきます」という言葉を合図に、晩餐が始まった。


「葵さんには、夏休みの間に編入試験を受けていただくことになります。しかし、きっと問題はないでしょう。地元では一番の進学校に通っていて、しかも常に5番以内には入っているそうですから」


「そうか…。優秀なんだな」


「ええ。とても頑張り屋さんですよ」


親父が、深いため息を漏らす。


「長かったな…たどり着くのに、3年もかかってしまった」


「足取りをたどるのが大変だったみたいですね。瑠璃さんはあちこち転々としていましたから。葵さんが保育園に入園したのを機に、あの土地に落ち着いたようです」


「ご苦労だったね、神崎君」


「いえ、捜索して下さったのは、調査事務所の方ですから。私はただ手配をしただけで」


「しかし、私の代わりに葵に会いに行ってくれたり、様々な手続きを滞りなく進めてくれて、本当に助かった。会社とは関係のない、プライベートなことを任せてしまって、申し訳ないと思っているよ」
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