いつか見る青
「紫さんなら、きっとすぐに社長の片腕になって下さいますよ。社長ご自身も、あと何年とおっしゃらず、存分に手腕を発揮して、ミヤマ文具店を盛りたてていって下さい」


「会社の存続は、顧問弁護士である君の将来にも影響するしな」


「そういうことです」


彼は朗らかに笑った。


まだ28歳だというのに、その如才のない話術は大したものだと思う。


弁護士という職業柄、他人とのコミュニケーション能力が鍛えられるのだろうけど、それだけが理由ではないだろう。


この人は昔からこういう人だった。


「紫君」


ふいに、神崎さんがこちらに視線を向ける。


「葵さんをお迎えに行く日、良かったら一緒に行かないかい?」


「は?何で俺が?」


「紫君が一緒なら、葵さんも喜ばれると思うんだけど」


「やだね。だって、田舎だろ?車で何時間もかかんだろ?」


「色々荷物があるし、電車という訳には……。もちろん私が運転するよ」


「無理。俺、色々やる事あるし。そんなくだらないことに時間使ってる暇ないから」


「ゆかりっ」


親父が鋭い声で割り込んで来た。
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