いつか見る青
「くだらないとは何だ。お前の姪のことだぞ」


「俺は別にそんな奴見つからなくたって良かったよ。親父が勝手に動いたんだろ」


食事はまだ途中だったが、俺はわざと乱暴に箸を置き、席を立った。


「紫!」


背後から怒気を含んだ声をかけられたが、あえて無視する。


裏切り者の言うことなんか聞く必要はない。


「あら、紫さん。もう夕飯はお済みですか」


廊下を進み、食後のコーヒーくらいは飲もうとキッチンに足を踏み入れると、隅にあるテーブルで食事をとっていた民さんに声をかけられる。


俺達と基本的に同じメニューだが、小鉢が1、2品少ないようだ。



「うん…あんまり食欲なくてさ。残してごめん」



「あら、ダメですよ。それでなくても痩せてらっしゃるんですから、どんどん食べて栄養つけて下さいな」


その声に曖昧な笑顔で答えてから、コーヒーメーカーに近付いた。


すでに出来上がっているその琥珀色の液体を、自分のマグカップに注ぐ。


民さんが慌てて立ち上がったので「自分でやるから」と手で制した。
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