いつか見る青
「なぜこんなになるまで……」


診察した先生は愕然としていた。



「日常的に、尋常じゃない痛みが襲ってきていたはずです。普通に起きて、動きまわっていたなんて、とても信じられない」


お母ちゃんの腹部のレントゲン写真を示しながら説明されたけど、私には、その画像の恐ろしさはまったくもって理解できなかった。


お母ちゃん、必死で我慢しちゃったんだな……。


いつもそうだった。


どんなに具合いが悪くても、絶対仕事は休まなかった。


「お母ちゃんの代わりなんていくらでもいるんだから、病気で倒れたりしたら、すぐクビになっちゃうよ」って、口癖のように言ってたから。


自分が働かなくちゃ、私が高校に行けなくなっちゃうから。


だから頑張っちゃったんだ。



ホントはもう、我慢なんかできるようなレベルじゃなかったのに。



「残念ですが、ここまで進行してしまっては、私どもには手の施しようが……」



その言葉を聞いて、私はかえって冷静になった。
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