いつか見る青
神崎さんはバックミラーとサイドミラーにチラリと視線を向けつつ、右にウィンカーを出すと、そのバスを滑らかなハンドル捌きで追い越した。
「それに五平氏は7人兄弟の5男で、すでに所帯を持っていたお兄様達が援助して下さったという背景もあるみたいですよ」
神崎さんは、かなり運転には慣れているようだ。
助手席に座っていても、無駄な振動とか遠心力とかは、全く体に感じられなかった。
「店の業績はまずまず順調で、戦前から戦後の混乱期まで上手く切り抜ける事ができ、昭和30年代には店舗を拡大し、ご自宅は別の場所に建て直すまでになっていました。その頃には従業員も10人ほど雇い入れていたようです」
神崎さんはハンドル捌き同様、滑らかな口調で講義を続ける。
赤信号に捕まったところで、私に視線を向けた。
「それでも、まだその時点では『町のちょっと大きな文房具屋さん』という程度の規模でした。本社を東京に移し、支店を持つまでになったのは、一郎氏が経営に携わるようになってからです」
ほどなくして信号が青に変わり、神崎さんは静かに車を発進させる。
「それに五平氏は7人兄弟の5男で、すでに所帯を持っていたお兄様達が援助して下さったという背景もあるみたいですよ」
神崎さんは、かなり運転には慣れているようだ。
助手席に座っていても、無駄な振動とか遠心力とかは、全く体に感じられなかった。
「店の業績はまずまず順調で、戦前から戦後の混乱期まで上手く切り抜ける事ができ、昭和30年代には店舗を拡大し、ご自宅は別の場所に建て直すまでになっていました。その頃には従業員も10人ほど雇い入れていたようです」
神崎さんはハンドル捌き同様、滑らかな口調で講義を続ける。
赤信号に捕まったところで、私に視線を向けた。
「それでも、まだその時点では『町のちょっと大きな文房具屋さん』という程度の規模でした。本社を東京に移し、支店を持つまでになったのは、一郎氏が経営に携わるようになってからです」
ほどなくして信号が青に変わり、神崎さんは静かに車を発進させる。