いつか見る青
私にそこまでの才能があるとは思えないし、投資して、結局ものにならなかったらお金をドブに捨てるのと同じことだ。


そんな危ない橋は渡れない。


だから、きちんと就職してお給料をもらえるようになってから、もし余裕があったら、大人向けの絵画教室に通おうと思ってた。


あくまでも仕事の息抜き、趣味として。


それまでは、とりあえずお洒落で珍しい画材を眺めて心を癒そうと思っていたんだ。


「ミヤマ文具店て、全国にあるんですか?」


私はふと疑問に思った事を尋ねてみる。


「いえ。現時点ではまだ関東甲信越地方を中心に10店舗ほどです。しかし、一郎氏の代でそこまで店舗数を増やした訳ですから、驚異的な成長ですよね。本社は東京の銀座ですからね」


「えっ。そうなんですか?」


東京の中でも、銀座は特に高級でお洒落な街らしいもんな~。


おじいちゃんて、すごい人だったんだ……。


「今後、さらに事業拡大を図っていく予定です。目標は、関西への進出らしいですよ」


神崎さんは朗らかな声でそう言った後「ただ……」と少しトーンダウンして言葉を繋いだ。
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