いつか見る青
「助からないのなら、せめて苦しまないようにして下さい。最後くらいは、ゆっくり眠らせてあげて下さい」


今までずっとずっと働きづめだったんだから。


お母ちゃんには痛み止めの薬が点滴された。



しかもかなり強いレベルのものを。



苦しまないようにするにはそうするしかないらしい。



お母ちゃんは穏やかに眠っていた。


それまでの苦しそうな表情が嘘のようだった。


私はすごく安心した。


こんなにゆっくり休めたのは、初めてだよね、お母ちゃん。


何にも心配しないで、どうか楽しい夢を見て。


私はお母ちゃんの寝顔を見ながら心の中でそう囁くと、小さい時お母ちゃんがそうしてくれたように、そのおでこにやさしくキスをした。


お母ちゃんはそのまま眠り続けた。



二度と、目覚めることはなかった。



誰もがいつかはたどり着く、遠い遠い場所へと。



お母ちゃんは、一人静かに、旅立って行った。
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