いつか見る青
「あえて不安要素をあげるなら、社長ご自身が憂いていることなのですが、その類いまれなる経営手腕を、現段階ではまだどなたも引き継いでいないという点でしょうか」


「あ、まだ、おじ…祖父は現役なんですね」


てっきり、名ばかりの社長なのかと思ってた。


「ええ。社長はずっとワンマンでやってらっしゃいましたから。……『ワンマン』てご存知ですか?」


「ん~と」


本来「独裁者」という意味だけど、それだとストレートすぎるな、と思い、もうちょっとやわらかい表現を必死で探す。


「すごく能力があって、他人の手を借りなくても一人で何でもできてしまう人のことですよね?特に、自ら現場で指揮して社員さんに恐れられてる社長さんのことを『ワンマン社長』なんて言うみたいですけど」


神崎さんは一瞬だけこちらに顔を向け、「良くできました」という風に微笑んだ。


「まぁ、社長は恐れられている面もありますけど、それ以上に社員の皆さんから尊敬されていますけどね。ただの二代目のお坊ちゃまではなかった訳ですから」


神崎さんの口調はどこか誇らしげだ。
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