いつか見る青
お母ちゃんは、天涯孤独だった。


小さい時両親が亡くなって、養護施設で育って、大学は行かずに高校卒業後すぐに働きに出た。


親戚はいたらしいんだけど、幼いお母ちゃんを誰も引き取ってはくれなくて、施設に面会にも来てくれなくて。


そのまま疎遠になってしまったらしい。



今となっては、どこに住んでいるのかさえ分からない。


もちろん、きちんと調べれば分かったんだろうけど、望まれてもいないのに会いに行く勇気はお母ちゃんにも私にもなかった。


だからお母ちゃんのお葬式に、親類は一人も呼べなかった。


だけど、職場の人や近所の人がたくさん駆け付けてくれて。


何をどうしたら良いか分からず、呆然としていた私のフォローをしてくれた。


「何で相談してくれなかったのかしら。水くさい。不当に辞めさせられそうになったら、あたしらが組合に訴えたのに」


お母ちゃんの仕事仲間のおばさん達が、悔しそうに泣いてくれた。


「あおいちゃん、少し休んだら?わしらがお線香見ててあげるから」


お通夜の晩、アパートの大家さんがやさしくそう言ってくれた。


「ありがとうございます。でも、大丈夫です。私、起きてます」


その煙は、お母ちゃんが天国に行くための道しるべになるから。


途中で消えたりしないように、私は朝までずっとずっと、お線香を見守り続けた。
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