いつか見る青
「家族なら気兼ねなく「疲れた」って言えるけど、他人が見舞いに来たりしたらどうしても無理してしまうだろうし。それに母さん寝巻だから。化粧もしてないし。そういう姿、赤の他人に見られるの嫌だろうから」


叔父さんは、『他人』という言葉を紡ぐ毎に私にチラチラと視線を向ける。


その冷たい眼差しに、心臓がギュッとなった。



「……そうだね。気軽に『一緒に』なんて言ってしまって、申し訳ない」


その言葉は神崎さんに向けられたものとは思えなかったんだけど、だからといって何をどう言ったら良いのか私には分からなかった。


だから神崎さんが丁寧に謝罪するのを、横でぼんやりと見ていることしかできなかった。


おばあちゃんが大病を患って入院中というのは神崎さんから聞いていた。


ただ、詳しい病状なんかはあえて説明されていない。


「私からではなく、ご家族からきちんとした説明を受けた方がよろしいと思います」って言われてたから。


だけど少なくとも、今はその説明を求める場面ではないよね…。


叔父さんは少し乱暴にドアを閉めて去って行った。
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