いつか見る青
呼び鈴の音がする。



お母ちゃんを抱きしめながら、私はいつの間にか眠っていたらしい。


ぼんやりとしたまま起き出し、玄関口までふらふらと歩く。



チェーンを外してドアを開けた。



あ、誰か確かめないうちに開けちゃった。



またお母ちゃんに怒られちゃうな……。



「大音葵さんですね」



戸口に、若い男性が立っていた。



大家さんには悪いけど、世間的には「ボロい」以外の何物でもないこのアパートにはまったくそぐわない、私でも「うわ~。なんかパリっとしてて高そうな生地~」と分かっちゃうようなスーツに身を包んだ、長身の、カッコイイ若い男性が。



「私、こういう者です」



何やら四角い紙片を渡された。



それが「名刺」というものだと気付くまでに、少し時間がかかった。



だって、私、まだ高校生だもん。



人生初の「私、こういう者」だったんだから。



「かんざき…さん?」


「ええ。主に、企業法務に携わっております弁護士です」


『べんごし…』


その言葉を理解するのにも、これまた時間を要した。



だって、私、まだ高校生だもん。



人生初の「弁護士」だったんだから……。
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