いつか見る青
「あなたを迎えに来ました。葵さん」


「……へ?」



あれ?



私、いつの間にこの人と出かける約束してたんだろ?


つーか、そもそもどこで会った?


いやいや、だから、今日が初対面だって。


さっき名刺渡されたじゃん。



私の心の中はてんやわんやしていた。


ボケとツッコミが舞台袖からわたわたと現れて、たどたどしい漫才を繰り広げている。


「無事見つかって良かった」



私を混乱の渦に巻き込んだ張本人は、冷静に淡々と言葉を繋ぐ。



「私と一緒に来て下さい。あなたを、待っている方がいるのです」



相変わらず私は呆然としていた。



それがすべての始まりの瞬間であったのに。



私の人生が180度変わることとなる、とんでもなくドラマチックであるはずのその瞬間。



私は今までの人生の中で、おそらく最もマヌケな顔をさらしていた。



一ミリ先さえ見通せない、深い霧に包まれたその運命と……。


私は自分でも、そうとは気付かぬまま、ひたすらぼんやりと、対峙していたのだった。
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