僕と鍵とお姫様
再び黙ってしまった僕に、先輩は、


「掃除だよ、部室の掃除。部長を驚かそうと思って!」


それで見つかりたくなかったから、鍵掛けてたの。と付け加えた。


『そうだったんですか、じゃあ、偽物の鍵も先輩が?』


「ああ、あれね。今持ってる?」


『はい、今渡しますね。』

と言ってポケットに手を入れようとしたが、


「あげるよ、その鍵。」


と言う、レナ先輩の声に止められた。


『?、この鍵ってなんの鍵なんですか?』


「それはお楽しみ、毎日、肌身離さず持っててね。」


『…?はい、じゃあ、持ってます。』


(…何なんだろう、)


「はい、部室の鍵!明日の体育、陸上なんでしょ?じゃ、鍵返しといてね!また明日ー。」


と、早口に言うと、僕に“さよなら”っ返させる暇も与えず、すぐに帰ってしまった。




< 10 / 12 >

この作品をシェア

pagetop