××倶楽部
────「だってと、でもは、聞き飽きました! いいですか? ハヅキさんマサキさん」
マーベラスのスタッフルームのソファーの上で靴を脱いで正座させられた二人が、はいぃ、と頭を下げた。
さっきまで反抗的だったマサキさんがいつの間にか社長の説教に頭を下げていた。
自分を百万で買った男に完全に服従しているようだ。
「僕は、ハヅキさんが女王様を辞めるのは全然かまわないんです! 他にやりたいことがみつかり、彼女が生き生きと幸せな女性として過ごせるならば、それが一番です。マーベラスには、そうやって辞めていく女王様がいますし、中には結婚されて、幸せな家庭を築いた女王様もいます。そういう人には僕は全力で応援しますよ。
でも、ハヅキさんは彼の言いなりじゃないですか! 僕はそれが一番許せないんですよ! バーを開店させるっていう夢はどうしたんですか! なんで、またホストクラブに戻ってるんですかぁ!」
肩ではあはあと呼吸を整えてメガネを指先でくいっと戻すと、社長の説教はまだ続く。
私の隣で頬杖をついてその様子を見ていたリオ様がクスクスと笑ってた。
「バカね、聖夜。ほっとけばいいのに」
「はい……でも、優しいんですね社長って」
リオ様は退屈そうに髪を指に巻きつけたりしながら、社長を大切そうに見つめる。
「そうね……優しいわ。とっても」