××倶楽部

「社長は、どうして私にこんなことするんですか? マーベラスの一員だから、自分の店の大切なスタッフだからですか?」


 自分の淡々とした声が静かな寝室に響く。泣きごとみたいで嫌だ。

 最初からミーナ様に、たぶらかすな、と注意されていたのに好きになって、リオ様に、私のものよ、と言われて……

 社長は、ハヅキ様にだって甘くて優しくて…………自分だけが特別だなんて期待しちゃいけない。


 なのに、独り占めしたくて悔しくて涙が出てきた。


 私の涙に気がついた社長は、優しく私の髪を撫でると、背中も撫でてくれた。


 うっうっ、と声をもらして、病人の布団を濡らす。



「社長が好きです……」


 告白するつもりなんてなかった。風邪にうなされた幻聴だと思ってくれてもいい。

 だけど、社長の熱い手が優しすぎて私は自分の気持ちがおさえられない。


「社長は皆に優しくて、誰とでも抱き合うし誰とでもキスする。そういう男の人だってわかってるのに、私だけを好きでいて欲しいって期待しちゃうんです。

 私、社長のせいで嫌な女になっちゃう……リオ様もミーナ様もみんな社長が好きなのに……なのに、なのに」


 自分だけ特別扱いして欲しい。

 社長は女にそう思わせる天才なのかもしれない。
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