××倶楽部
「わたし、産みたいんです……好きな人の子だから…………」
何だか私まで泣けてきた。雫さんの痛いくらい必死な気持ちが伝わってくる。
最初に緊張した顔で入ってきた雫さん。お兄ちゃんとの結婚を反対されないか心配だったんだと思う。
「わ、私! 賛成だよ。お兄ちゃんに彼女いたことすら奇跡だもん」
「俺も、賛成ー。てか、俺家族じゃねーけど」
「私も、賛成。すごい嬉しいわ。雫さんのご両親の分も、うちの亡くなったお父さんの分も、私がその子を一生懸命可愛がってあげたいわ」
雫さんは緊張の糸が途切れたのか、うわーっと泣き出した。お兄ちゃんは、だから大丈夫なんだよ、と優しく彼女を抱きしめる。
「うわぁん! 典、お兄ちゃんオタクのくせにあんな可愛い人をお嫁さんにしちゃったよー」
「はあ? アキ兄はオタクだけど、それなりだろ。その前に、おまえがなんで泣いてんだよ!」
「だって、感動しちゃったんだもん」
お母さんは雫さんの手をとって、よろしくね、と笑顔で挨拶していた。