××倶楽部
────「でさ、帰んないの?」
お兄ちゃんの部屋から勝手に抜き取ってきた漫画を、さも当然かのごとく私のベッドの上で寝っ転がって読み出した典。
「腹いっぱいになったから動きたくない」
「あー、また彼女と別れて暇人なんでしょ? 典もお兄ちゃんみたいに本命探しなよー」
お昼ご飯はお祝いを兼ねて、近所のお寿司屋さんから特上握りを配達してもらった。
雫さんはおしとやかで静かな人、お兄ちゃんにはもったいないくらい素敵な人だ。
午後はお母さんがマタニティを買ったほうがいいと言い出し、お兄ちゃんと雫さんとお母さん三人で駅前のデパートに出かけていった。
「アキ兄にはまじで驚かされたよな。全然気がつかなかった」
「当たり前、一緒に住んでる私とお母さんですら全然気がつかなかったんだから! お兄ちゃん、たしかに夜いなかったり休みの日に出かけたりしてたけどアニメのイベントとかそういうのに忙しいと思ってた」
「まあ、大人だからなぁ……そういえば本命て言えばさ、おまえどうなったの? あのクサハラだかクサムラだか、シマウマみたいな名前の社長とは」
「シマウマって……典、実物みたらそんな軽口叩いたこと後悔するよ? すっごいカッコいいんだから!」
「はいはい、そうですか。で、そのすっごいカッコいい社長はどうしたんだよ」
私は典の隣に座ると、ふふん、と鼻をならした。
「次の休みにデート誘われちゃった」