××倶楽部

──────「ただいまぁ」


 社会人一日目、私は新たな世界に一歩を踏み出し、そして無事に生還した。


「あら、芽依(めい)ちゃん、おかえりなさい。夕飯は?」

 なんて、カッコつけてみたけど、お母さん、ごめんなさい……私、SM倶楽部に就職してました。内定とれたのが嬉しすぎて浮かれまくって、その会社のこと詳しく調べてませんでした……とは言えずに「まだ食べてない」と答える。


「肉じゃができてるわよ」


「ありがとう、着替えてくるね」


 部屋に入ると、どっと疲れが出た。

 しかも、マーベラスに響き渡るお客様のエグい叫び声が頭の中をぐるぐると駆け巡ってる。


『ぐわぁああああ、リオ様ぁあああっ!』


『ミーナ様ぁっ……あ! お許しくださぁいいいいっ! ギャーッ!!!』



 それを涼しい顔して、皆さん働き者でしょ? と得意気に言った、あの社長ときたらっ!


 もう、本当に有り得ないんだからっ!




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