××倶楽部
────仕事が忙しくて一日があっという間に終わっちゃう日もあって、約束の日はすぐだった。
サイクリングデート当日。私は鏡の前で眉間にシワを寄せていた。
気合いいれすぎた服装も変だし、かといってラフすぎる服装も嫌だし、朝から頭を悩ませてカジュアルだけど裾からレースがチラチラとみえる可愛いワンピースを選んでウエストで太目のベルトをまいた。
こんな服装で大丈夫かなぁ? 社長の好みってリオ様みたいな大人っぽい服装かなぁ? ああ、悩む。
「芽依」
「えっ? やだ、典! 勝手に人の部屋入って来ないでよ! ばか!」
洋服選びに夢中になりすぎて、すぐ後ろに不機嫌そうな典がいたことにまったく気がつかなかった。
「まじで行くのか? デート」
「当たり前でしょ! じゃあね、バイバイ!」
「帰ってくるの待ってるから」
バッグを掴んで急いで部屋を飛び出した。びっくりした……典のことはあれ以来気まずくて避けてたのに……
「──おはようございます。町田さん」
「お、おはようございます!!」
駅前で待ち合わせしていた。その社長の立ち姿に目眩がした。
しかも、社長、私服も素敵すぎ。グレーのVネックシャツにエリをたてたジャケット、カーゴパンツにレースアップのブーツ。
ああ、まばゆい…………典なんか眩んじゃうくらいに素敵。
そうだよ、典のことなんて……典のことなんて…………待ってるって言ってたけど……
「町田さん、どうかしましたか?」
「あ、いえ、大丈夫です」