××倶楽部
繋いだ手をそのままで、木の幹に背中を優しく押し付けられて社長のキスを受け入れる。
唇を塞ぐだけの甘いキス。コーヒーの味がする。
遠くから子どもがはしゃぐ声が聞こえて、水辺で鳥が羽ばたく音がする。
「昼間の公園で僕は何をしているんですかね。急にキスしたくなって……」
「いえ、いいんです」
私もしたかったから……食事中も社長の唇ばかり気になっていました、とは言えないけど、その魅力的すぎる唇は何か女を引き寄せるものがある。
「僕も芽依って呼んでもいいですか?」
はい、と答えると、またキスされる。唇は為すすべなく社長に塞がれる。
体中が社長からのキスに喜んでる。
社長の左手が頬を撫でて首筋を上下する。キスが深まる。舌と舌が絡み、社長の息づかいまで感じる。
「今日は余裕ですね? この前はヤバいくらい息も絶え絶えになってましたけど、練習でもしましたか?」
くくっと笑われて、脳裏に典の真剣な顔がチラついた。今は思い出したくない。典とのキスを、目の前にいる好きな人に全てを見抜かれてしまったんじゃないかと心配になる。
「あの…………」
でも、社長も誰とだってキスしてるし。